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少女を揺する手を止めて、俺は様子を窺う。
「う…………」
ゆっくりと少女の目が開く。
「どうやら、気付いたみたいだな」
ぼやけた瞳に光が灯ったのを確認し、俺は胸をホッと撫でおろした。
「……あ……き?」
「大丈夫か、おい……」
「あ……き……や、ま……さん………」
「はっ? なっ……」
俺は驚きを隠せなかった。
「どうして、俺の……」
少なくとも、俺の方は彼女に見覚えがない。
「確認しま……した……大丈夫です…………」
たどたどしかった少女の言葉が、次第にしっかりしたものへと変わっていく。
「秋山さん……」
どこかに感情を置き忘れてきた様子で――
しかし、どことなく憎めない表情で彼女は言う。
「私を……よろしく、お願いします……」
「いや、あの……よ、よろしく……」
思わず答えてしまったものの、俺の頭の中は混乱の頂点へと向かっていた。
――と、その時、不意に近づいてくる足音に気付いた。
「あの、着替えが終わりました……」
全裸ではなくなった話題の主が姿を現す。
「………………(´・ω・`)」
「もう、なんて顔してるの。 もしかして『ちょっと残念~』とか思ってる?」
「……うん」
正直に答えてしまった俺の目に、カバンを振り上げた笑顔の佳織が映った。
「大変申し訳ありません、佳織様」
「はい、よろしい」
凶器を引っ込めた佳織が、俺から少女へと視線を移す。
「じゃあ、ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな」
「はい、構いません……」
「だったら、中に入らないか? 立ち話もなんだろ」
たったいま少女が出てきた保健室を示しながら、俺は提案した。
「そうだね、そうしようか」
「分かりました……」
どうやら異論はないらしい。俺たちは揃って保健室のドアをくぐった。
「あの……しかし、本当によろしいのですか?」
「えっ? 何が?」
「この制服のことです。 こうして私がお借りしてしまったら……」
「………………(\*´・ω・)」
「奏くん?」
気がつけば、物騒な笑顔で佳織がカバンを構えていた。
「ちょっ、待って! お、俺は全裸の愛理なんて……想像してないぞ」
「ふ~ん、想像してたんだ」
「なっ、誘導尋問か!」
「もう、奏くんっ!」
振るわれた全力のカバン三連打を紙一重でかわし、俺はそのまま――
「すみませんでしたっ!」
申し訳なさを前面に押し出し、稲光のごとき速さで頭を下げた。
「大変申し訳ありません、佳織様」
「もう……」
全力の謝罪が効いたらしい。佳織はぶつぶつ言いながらも、凶器を引っ込めた。
「えっと……」
「ああ、すまん。 それで……えっと、制服のことは気にしなくていい」
佳織の機嫌を窺いつつ、俺は少女に説明した。
「そうなのですか?」
「それは部室に置きっぱなしだったやつだからな。 特に問題はないはずだ」
どうやら機嫌は直ったらしい。佳織が俺の説明を補足する。
「うん、愛理ちゃんの予備の制服だね。 持ち主にも借りるって伝えたし、気にしないで」
「はい、それでは遠慮なくお借りします」
「しかし、あいつもよく制服の替えなんて持ってたな。 女の子ってそういうものなのか?」
「ううん、愛理ちゃんだから……だね」
「なるほど、『愛理だから』というのなら納得だ」
周到なあいつのことだ、予備くらい持ってて当然だ。例えばケンカやスポーツで――
――いや、待てよ?
常にあいつはパーフェクト勝ちしてるじゃねぇか!
「……愛理に予備の制服なんて必要なのか?」
「う~ん、必要だから置いてるんじゃないかな?」
答える笑顔が苦笑い混じりであるあたり、俺と同じ疑問を少なからず佳織も抱いているようだ。
「でも、とりあえず愛理ちゃんの話は置いといて……」
「おっ? ああ……」
佳織と俺は少女に向き直った。
「改めまして、こんばんは……でいいのかな? 私は佐々木佳織って言います」
「……秋山奏と言います」
佳織に続いて自己紹介してから気付く。
そう言えばこの少女、どうして俺の名前を知ってたんだ?
「あ、私は古川ゆいです。 よろしくお願い致します」
「古川……ゆいちゃん?」
「はい……」
「そっか、よろしくね」
「はい」
「じゃあ、本題に入っていいかな。 少し話を聞きたいんだけど……」
ひと通りの自己紹介&挨拶を互いに終えたところで、佳織は切り出した。
「さっきの場所――なんだけど、 あの、あそこで……何があったの?」
慎重な態度で佳織が問う。
対する問われた少女こと古川ゆいは、特に動じることもなくあっさり答えた。
「これといって何も……」
「えっ?」
「いやいや、何もなかったってことはないだろ」
身構えていた反動であぜんとした佳織に代わり、俺は少女に言葉を返した。
「お前はあそこで倒れていたんだぞ? しかも――」
素敵な映像が脳裏に浮かびかける……が!
目の端でカバンがゆらりと持ち上がった気がして、俺はその映像を制御しておく。
うん、それを思い出すのは孤独な夜にしておこう。
さて、となると――
俺は別の要素を列挙する。
「じゃあ、あの派手な揺れと、大きな音なんだが……」
「あ、うん、それは私も感じた」
佳織が会話に復帰。親身な表情で古川を見つめた。
「もし、訳があるのなら話して。 私たちなら力になれるかもしれないし」
「すみません、お心遣いは嬉しいのですが……」
「私にとって不都合な出来事はありませんでした。 ですから、ご心配には及びません」
「そう言われても……なぁ、佳織」
「う~ん、初対面の私たちには、 やっぱり話しにくいのかな……」
「初対面……」
耳に引っかかった単語を何となく呟いた俺は、ふとひらめく。
「そもそも、古川はこの学園の学生なのか?」
「はい……先日、転入してきたばかりですが、 1-Aの学生です」
「1回生? じゃあ、私たちの後輩なんだね」
だったら、古川が俺のことを知っていたとしても、不思議ではない……のだろうか。
例えば、今日の柔道部との騒動を見ていたとか。
それなら……「あの人は誰ですか」と尋ねれば、可愛い転入生に答えるやつもいただろう。
「でも、後輩なら尚更……かな。 先輩として、ゆいちゃんのことが心配なんだけど」
「すみません、重ね重ねになってしまいますが、 ご心配には及びません」
「じゃあ、倒れていた理由は? そして……服を着ていなかったのはどうして?」
「それは、お答えできません……」
言いたくないのか、それとも言えないのか。
表情が読めないので分からないが、なんにせよ聞き出すことは難しそうだ。
「分かった。 それじゃ一つだけ確認させてくれ」
「なんでしょう?」
「不都合な出来事はなかったって、 さっき言ったよな?」
「はい」
「それはつまり、えっと……こう、あれだ――」
佳織のように上手ではないが。
俺なりに古川を気遣い、慎重に言葉を選んで問いかける。
「誰かにひどいことをされた……とか、 何か辛い目に遭ったとか……」
「そういうのは……なかった、のか?」
佳織と俺が最も心配していること。
裸の一回生が何者かに何かされてしまった、という懸念。
だが、ゆいは淡々と自分の胸を押さえて告げる。
「そのようなことはありません。 私は一人で……あの場所にいたのです」
「一人って……」
その詳細のところに問題がある気もする……が、どうやら俺たちの心配は、取り越し苦労だったようだ。
「嘘じゃないみたい、だね」
「ああ、そうだな」
顔を見合わせて確認しあった佳織と俺は、ホッと安心して表情を和ませた。
「ご心配をお掛けして、申し訳ありません」
「ううん、こちらこそ。 変なことに気を回しちゃって、ごめんなさい」
「変なことですか?」
「ほら……格好が格好、全裸だったろ?」
安心で気が緩んだからだろう。
思い出してしまった俺の声が、ついつい楽しそうに弾む。
「…………」
気づいたときには遅かった。
物騒に微笑みながら、佳織がカバンを大きく振りかぶっていた!
「大変申し訳ありません、佳織様」
「よろしい」
この謝罪は、何となくクセになってきた気がする。
「いえ、大丈夫です。 私は気にしていませんから」
「えっ? でも……裸を見られたんだよ?」
「はい、問題ありません」
「えっと――」
まったく動じていないニュートラルな古川を前に、同性として佳織が大いに驚く。
まぁ、同性ではないが……それには俺も同感だった。
「いや、そう言ってもらえると俺も気が楽だが……」
「あれは……言わば事故ですから」
「いや、しかし……」
「犬に噛まれたようなもの、という言葉もあります」
そういう時に使う言葉なのかは、はなはだ疑問だが――
「う~ん、ゆいちゃんがいいのなら、 それでいい……のかな?」
「はい」
「……だそうだ」
「う~ん……」
今一つ納得しきれない感じの俺と佳織だが、このまま考え込んでいても埒があかない。
「とりあえず、時間も時間だ。 ひとまずまとめておくか」
「……うん、そうだね」
「今日5階で何かがあったが、古川は無事。 全裸だったのは別として、特に問題はなし!」
「はい」
「誰かに迷惑だってかけてないんだよな?」
「いえ……」
「えっ?」
まさか、他に関連する人物が……
「秋山さんと佳織さんには、介抱して頂いたり、 制服を貸して頂いたりと、ご面倒をおかけしました」
「なんだ、俺たちか……」
俺は胸を撫で下ろす。
「私たちのことは、気にしなくていいよ」
穏やかに微笑みながら佳織がフォロー。
「私たち以外には、何もないんだよね?」
「はい」
「だったらいいよね、奏くん?」
「ああ」
全裸のことやら揺れやら音やら、謎だらけではある。
けれど、みんな無事なら、ひとまず今はそれでいい。
唯一の大問題である、俺が裸を見てしまった事も気にしてないようだし。
「それじゃ、そろそろ帰ろうか。 ずいぶんと遅くなっちゃったけど」
「はい」
「よかったら、家まで送っていくけど?」
「そうだね。 うん、それがいいかも」
「いえ、私は一人で大丈夫です。 私は近くに家を借りてもらってますから」
「そうなんだ」
「はい、問題ありません」
とりつく島もなく、古川はぺこりと頭を下げた。
「では、私はこれで失礼します……」
辞した後、くるりと回れ右をして、古川は保健室から去っていった。
「なんだか……不思議な雰囲気の子だね」
「そうだな」
「でも、悪い子じゃないね」
「そうだな」
「肌も綺麗で、可愛かったもんね」
「そうだな!!」
「……ふふふっ」
「すみません、ごめんなさい、申し訳ありません。 カバンをお収め下さい!」
「もう、早く忘れてあげなきゃ駄目だからね」
「分かってる……」
確かにラッキーな事故だった。
しかし、それが古川的にOKだったとしても、いずれは忘れてやらないといけないものだ。
「まぁ、口調とかは変だったが、すごくいい子だった」
「うん、そうだね」
何故だか和やかな気持ちで、俺は古川を見送っていた。
多分、佳織も俺と同じのはずだ。
けれど――
ほんわかと和んでばかりもいられないことを俺は思い出してしまった。
「やばい!」
「え? 何が?」
「もうこんな時間だ! 早く帰らないと、詩織さんカンカンだぞ!」
「あ……」
恐怖と書かれた青い顔で、硬直する佳織であった。
そして、もう一つ。
古川が俺を知っていた理由だ。
同じ学園の学生だから、知っていたとしても不思議ではない。
俺のことを知る機会ならいくらでもあるだろう。
真っ先に思いつくのが昼間の柔道部とのゴタゴタ。
あの時の観客の中に、彼女がいたのかもしれない。
あるいはいなかったとしても、あれだけの騒ぎだ。間接的に知ることも充分に考えられる。
だが……
そんな野次馬レベルの認識ではないような、そんな気がするのだ。
もっと強いレベルで、もっと深いレベルで、古川は俺を認識していたような気がする。
……というのは、自意識過剰か?
「どれもこれも、分からないことだらけだ」
ピースが不足し過ぎている空白だらけのパズルだ。どう考えても分からない。
「せめて、古川からもう少し詳しい話が聞ければ……」
だが、今日の彼女の態度を思い出すと、それはとても難しそうだ。
「古川については手詰まり……となると――」
「やっぱり柔道部の件を優先すべきだよな。 学園祭まで、後18日だし……」
とりあえずの指針は、そちらに移しておくとするか。
俺はぐぐっと身体を伸ばしながら、そんな風に考えていた。
怒りの爆発が背景に見えそうな形相で柔道部員が叫ぶ。
今にも先輩に襲いかかりそうな勢いだ。
俺は瞬時の判断を余儀なくされた。
答えは1つ。
せっかく先輩が『おとり』を演じてくれたのだ。俺は古川へと走った。
「うぉっ!」
先輩に気を取られていた柔道部員が慌てる。
しかし、もう遅い。俺は古川を退かせて、彼女を背にかばう位置に立つ。
「てめぇ!」
「くそ、ならこっちを!」
ターゲットを先輩へと再設定する柔道部員。
だが、これまた遅い。
「イェイッ!」
柔道部員が俺に気を取られていた隙に、ケニーは先輩を背にするポジションをゲットしていた。
「見事なコンビネーションですね」
マイペースな感想が背後から聞こえた。
この様子なら大丈夫そうだが、念のために俺は尋ねる。
「大丈夫か?」
「はい、問題ありません」
「なら、OKだな」
これで作戦の第1段階はクリアだ。
……ということは、だ。
「ヘィ、奏! 後は騎兵隊の到着を待つだけだぜ!」
「そんな消極的作戦は却下よ」
「さぁ、わんわん1号さん&2号さん、 今すぐ悪党どもをやっておしまいなさいっ!」
「え、俺……わんわんですか?」
「嬉しいでしょう?」
「嬉しいのですか?」
「いや、あの……」
「おお……俺が1号か!」
「いや待て! じゃあ、俺が1号で!」
「……分かった、それなら俺が力の2号だ! さぁ悪党ども、かかってこい!」
「ただし……俺はメニィ強いぞ!」
どうやらケニーは、1号でも2号でもいいらしい。
どちらかと言うと、ケニーの方が力持ちだから、役割としては2号の方がピッタリだが……
「ふふっ、上出来よ二人とも」
「チッ……」
柔道部員はひるんでいた。
なにせ昨日の今日である。連中はケニーの強さを身をもって知っているのだ。
「あの……秋山さんも強いのですか?」
「いや、俺は……まぁ、申し訳程度だな」
暴力とかは、正直苦手な部類なのだ。
古川はきょとんとしていたが、納得したのか視線を彼らに向けた。
俺も話し相手を柔道部員へと変更し、台詞を続ける。
「……というわけで俺は弱い。 昨日の今日だから、お前たちもよく知ってると思う」
「だから、かかってこない方が身のためだ」
「……あん!?」
「昨日は運よく気絶ですんだが、 多分だけど、今日の俺は非常に運が悪い」
「あら、本当。 奏さんの顔に死相が浮かんでるわ」
「シィット! よくも俺のソウルフレンドを殺したな! 許さんぞ悪党ども!」
「…………いや、まあ、うん」
「秋山さん、死んではいけません」
「いや、あのな……」
どうしてだろう。
最初は軽い脅し(?)のつもりだったのに、どんどん本当に命の危険を感じてきた。
「これで貴方たちも、めでたく殺人罪ということね」
「そうね……死刑か無期、もしくは五年以上の懲役。 大変そうね、まだ若いのに……」
「くっ……」
猛烈にやりづらそうな様子で、柔道部員は攻撃を躊躇|ためら)う。
上出来だ。この調子でうまく時間を稼ぎ続ければ――
「スーパー愛理ジャァァンプ!」
おっ! 真打か!どうやら、もう時間稼ぎの必要はないようだ。
「スーパー愛理キィィック!!」
答えは1つ。
せっかく先輩が『おとり』を演じてくれたのだ。
「ゴゥッ!」
それに気付いたケニーが、真っ先に動いてくれた。
「うあっ!」
先輩に気を取られていた柔道部員が慌てる。
しかし、もう遅い。ケニーはササッと古川を背にかばう位置に立つ。
「てめぇ……」
「くそ、ならこっちだ!」
ターゲットを先輩へと再設定する柔道部員。
だが、これまた遅い。
「はい、残念」
柔道部員がケニーに気をとられていたスキに、俺は先輩を背にするポジションをゲットしていた。
「素敵なコンビネーションね」
「先輩があいつらを煽ってくれたおかげです」
「これで後は、お寝坊さんの到着を待つだけね」
「ええ、できるだけ早く来てくれることを願ってます」
「もし来なかったら?」
「来るまで壁を務めますよ」
ケニーはともかく俺は弱い。
柔道部である彼らに勝つのは難しい。
けれども、時間稼ぎくらいはできるはずだ。
「先輩には、指一本触れさせません」
「ふふっ、ありがとう、奏さん」
毒舌を浴びることが多いせいか、感謝の言葉がこそばゆい。
「よっし! 覚悟完了!」
俺は意気揚々と身構えた。
しかし、その意気込みは空振りに終わってしまった。
「ウルトラ愛理ジャァァンプ!」
ウルトラヒーローの到着であった。
「ウルトラ愛理キィィック!!」
答えは1つ。
先輩が『おとり』を演じてくれた隙に、古川の安全を確保。
これが第1ステップだ。そして、第2ステップ――
まもなく登校してくる愛理の到着まで、俺たちが時間を稼ぐ。
ケニーはともかく、俺はとにかく弱い。
この場を切り抜けるには、やはりあいつの存在が不可欠だ。
なんとしても、愛理が来るまで持ちこたえなければ――
「ミラクル愛理ジャァァンプ!」
……時間を稼ぐまでもなかったらしい。
「ミラクル愛理キィィック!!」
必殺の一撃!!
「あぐぁっ!!」
柔道部員の1人がド派手にブッ倒れた。
「ナイス飛び蹴り!」
「今日もキレがあるわね」
「当然よ、完璧に決まったわ……」
前髪を揺らし、愛理が不敵に笑う。
「思った以上に早かったな」
切り札の到着に、ホッとひと安心して声をかける俺。
だが途端に、なぜか愛理は不機嫌顔になった。
「アンパンが売り切れだったのよ」
「……はい?」
「今朝は牛乳でアンパンを食べたい気分だったの」
「オゥ、牛乳とアンパンの組み合わせは、 最高にデリィシャスだからな!」
「そうなのですか?」
「うん、美味しいのは確かだな……」
「なるほど、覚えておきます」
「上出来だ」
「でもね、売り切れだったのよ、アンパン……」
それはそれは悔しそうに、愛理が拳を握り締める。
「だから、今日の朝食は牛乳だけ。 悔しさを噛み締めての一気飲みだったわ」
「ああ、それで来るのが早かったのか……」
「それでも充分に、お寝坊さんというのが素敵ね」
「でも、牛乳を飲むということに意義があるのよ」
「ええ、弛まぬ努力は必要よね」
愛理が自分の胸に手を当てると、先輩もそれに頷いた。
……なるほど、重要だな。
「……というわけで、今朝の私は機嫌が悪いのよ」
それほど悪く見えない辺り、半分以上ワザとなのだろう。
要するに、柔道部への降伏勧告も含んでいるのだ。
「さぁ、どうするの? このままだと痛い目を見るかもしれないけど」
「既に一人が痛い目を見てる気が……」
「そう……ですね」
「さぁ、どうする? 俺は撤退を勧めておくが……」
「な…………」
「私は無様にも果敢に挑んだ結果、 全員がボロ雑巾のようになるのを見てみたいわ」
その言葉がとどめになった。
「ぐぬっ……おっ、覚えてやがれ!」
捨て台詞一つを残し、倒れた仲間を助けあげて柔道部員は去っていく。
「あら、賢明な判断ね……」
「そうね、素早い解決になったわね。 私としては、多少暴れ足りないけど……」
「はい、どうどう」
「もうっ、人を馬みたいになだめないで」
「イェア、会長はじゃじゃ馬だからな!」
「ふふっ、蹴られたいのかしら?」
「いや、大変ソーリー申し上げます」
「よろしい」
「しかし、災難だったな古川」
「助けて頂いてありがとうございます、 秋山さん、皆さん」
「もしかして知り合いだったのか?」
「まぁな、昨日ちょっとあってな……」
口ごもったのが失敗だった。
面白いオモチャを見つけたような笑顔で、先輩が問いかけてくる。
「……口ごもったからには、 楽しい何かがあるのかしら?」
「いや、それは……」
さすがは先輩だった。こういう時だけは、他人の弱みを見逃さない。
「そ、そういえば古川! どうして柔道部にからまれていたんだ?」
やむなく俺が話を逸らすと、とんでもない冷気が先輩から流れてきた。
「少し尋ねごとをしたら、急に怒りだしたのです」
「ォワッツ? なんて尋ねたんだ?」
「はい、『私、天文学会に入りたいのですが、 どこに行けば宜しいでしょうか?』と」
「………………」
俺は思わず頭を押さえる。
「ノゥ……」
ケニーも同様らしい。
「どうして、あのおサルさんたちに尋ねたの?」
先輩は俺より興味が向いたのか、顔を楽しそうに輝やかせた。
「昨日、天文学会と柔道部が一緒だったという話を 聞きましたので……」
「ですから、柔道部の人に尋ねれば、 天文学会のことが分かると考えました」
「それはまた……すごい理論だな」
頭を抱える男性陣。
「……どんな風に一緒だったかは聞かなかったのね」
「言い争いをした結果、蹴られていた、と……」
「なるほどね、ふふっ」
それを知っていて柔道部に尋ねたのか。
それは天然ではあるが……柔道部にしてみれば、たまったモンじゃないだろう。
そりゃあ、負けた記憶も新しいのだから、思わず激怒しても仕方ない。
「とても面白い子だわ」
先輩は興味深そうな笑みを浮かべた。
「はい、合格! 今からあなたは、天文学会のメンバーに決定!」
「即決かよ!」
「はい、ありがとうございます」
「ありがとうって……」
「うん、それじゃ部室に案内するわ、ついてきて」
「あ、はい」
「いや、待て待て、まだ午前中だぞ」
「うん? ああ、そうだったわね。 じゃあ、また放課後ってことでいいかな?」
「はい、大丈夫です」
「それなら、授業が終わったら迎えをやるわ」
「迎え?」
「ちゃんとエスコートするのよ、奏」
「………………そんな気はしてた」
「あの、すみません、お手数をおかけします」
可愛らしい後輩がぺこりと頭を下げる。
こうなると先輩として悪い気はしない。
「分かった、じゃあ教室で待っててくれ。 確か1-Aだったよな?」
「はい、よろしくお願いします」
もう1度ぺこりと頭を下げて辞した後、くるりと回れ右をして古川は去っていった。
「なんだかミステリアスなレディだな」
去り行く古川の背中を目で追いながら、独り言のようにケニーが感想を述べた。
「そうだな……」
古川の背中をぼんやりと眺めながら、独り言のように答えて俺はうなずく。
「それで? 二人の間には『ちょっと』何があったのかしら?」
にこやかな笑顔の先輩に再び問われ、俺は一気に血の気が引いた。
そう、逃れられるはずがなかったのだ。
「えっ? いやその、ですからちょっと……」
「言葉を濁して誤魔化すほどに、 いかがわしい関係なのかしら?」
「違いますっ!」
しかし、脳裏に浮かぶのはあの姿で――
「何っ! エロスな関係!?」
「だから、違うっての!」
「まさか……脱がしたりしてないわよね?」
くっ、どうしてこんなに勘が鋭いんだ!
「ま、まさかそんなこと……脱がしてはいないぞ!」
「脱がして『は』いない、と……」
「……っ!」
この人の視線、マジで怖い!!
「なんか怪しいわね……」
愛理が俺の泳ぐ目を覗き込んだ。
「いや、本当に俺は清廉潔白……というか、 佳織に聞けば何もしてないのが分かるはずだ!」
「佳織に? 佳織か、う~ん……」
「ええ、奏さんと二人きりだったなら、 よこしまなこともあったでしょうけど……」
「二人であってたってことなら話は別だな」
「まぁ、それならいいか」
「なんだよ、やけに安心してるな」
「ううん、佳織がいなかったなら危険だけど、 佳織が一緒なら……ね」
「そう思う理由は?」
「え? ああ、なんとなくよ」
「なんとなく?」
「別に何でもないわよ」
「変なやつだな」
「奏にだけは言われたくないわ」
「まったくだ!」
「あのね、ケニーも十分変よ」
「オゥフ!!」
「変態度で言えば、ある意味奏さんよりも上よ」
「オォォオオウ!?」
「そこまで追い打ちますか……」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何も……」
「ならいいわ」
たおやかな笑顔の先輩を前にした俺は、ヘビを前にしたカエルの心境だった。
「ふふっ」
「………………」
『上手く逃れたわね』
その視線は、そう告げていた。
訂正――ただのヘビというレベルではない。この笑顔の威力はメデューサだ。
古川……お前が足を踏み入れたのは、モンスターハウスだ。
古川の去っていった方角に向かって、俺は心の中で合掌していた。

==Key==
==Key==
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Revision as of 23:21, 4 April 2024

少女を揺する手を止めて、俺は様子を窺う。 「う…………」 ゆっくりと少女の目が開く。 「どうやら、気付いたみたいだな」 ぼやけた瞳に光が灯ったのを確認し、俺は胸をホッと撫でおろした。 「……あ……き?」 「大丈夫か、おい……」 「あ……き……や、ま……さん………」 「はっ? なっ……」 俺は驚きを隠せなかった。 「どうして、俺の……」 少なくとも、俺の方は彼女に見覚えがない。 「確認しま……した……大丈夫です…………」 たどたどしかった少女の言葉が、次第にしっかりしたものへと変わっていく。 「秋山さん……」 どこかに感情を置き忘れてきた様子で―― しかし、どことなく憎めない表情で彼女は言う。 「私を……よろしく、お願いします……」 「いや、あの……よ、よろしく……」 思わず答えてしまったものの、俺の頭の中は混乱の頂点へと向かっていた。 ――と、その時、不意に近づいてくる足音に気付いた。 「あの、着替えが終わりました……」 全裸ではなくなった話題の主が姿を現す。 「………………(´・ω・`)」 「もう、なんて顔してるの。 もしかして『ちょっと残念~』とか思ってる?」 「……うん」 正直に答えてしまった俺の目に、カバンを振り上げた笑顔の佳織が映った。 「大変申し訳ありません、佳織様」 「はい、よろしい」 凶器を引っ込めた佳織が、俺から少女へと視線を移す。 「じゃあ、ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな」 「はい、構いません……」 「だったら、中に入らないか? 立ち話もなんだろ」 たったいま少女が出てきた保健室を示しながら、俺は提案した。 「そうだね、そうしようか」 「分かりました……」 どうやら異論はないらしい。俺たちは揃って保健室のドアをくぐった。 「あの……しかし、本当によろしいのですか?」 「えっ? 何が?」 「この制服のことです。 こうして私がお借りしてしまったら……」 「………………(\*´・ω・)」 「奏くん?」 気がつけば、物騒な笑顔で佳織がカバンを構えていた。 「ちょっ、待って! お、俺は全裸の愛理なんて……想像してないぞ」 「ふ~ん、想像してたんだ」 「なっ、誘導尋問か!」 「もう、奏くんっ!」 振るわれた全力のカバン三連打を紙一重でかわし、俺はそのまま―― 「すみませんでしたっ!」 申し訳なさを前面に押し出し、稲光のごとき速さで頭を下げた。 「大変申し訳ありません、佳織様」 「もう……」 全力の謝罪が効いたらしい。佳織はぶつぶつ言いながらも、凶器を引っ込めた。 「えっと……」 「ああ、すまん。 それで……えっと、制服のことは気にしなくていい」 佳織の機嫌を窺いつつ、俺は少女に説明した。 「そうなのですか?」 「それは部室に置きっぱなしだったやつだからな。 特に問題はないはずだ」 どうやら機嫌は直ったらしい。佳織が俺の説明を補足する。 「うん、愛理ちゃんの予備の制服だね。 持ち主にも借りるって伝えたし、気にしないで」 「はい、それでは遠慮なくお借りします」 「しかし、あいつもよく制服の替えなんて持ってたな。 女の子ってそういうものなのか?」 「ううん、愛理ちゃんだから……だね」 「なるほど、『愛理だから』というのなら納得だ」 周到なあいつのことだ、予備くらい持ってて当然だ。例えばケンカやスポーツで―― ――いや、待てよ? 常にあいつはパーフェクト勝ちしてるじゃねぇか! 「……愛理に予備の制服なんて必要なのか?」 「う~ん、必要だから置いてるんじゃないかな?」 答える笑顔が苦笑い混じりであるあたり、俺と同じ疑問を少なからず佳織も抱いているようだ。 「でも、とりあえず愛理ちゃんの話は置いといて……」 「おっ? ああ……」 佳織と俺は少女に向き直った。 「改めまして、こんばんは……でいいのかな? 私は佐々木佳織って言います」 「……秋山奏と言います」 佳織に続いて自己紹介してから気付く。 そう言えばこの少女、どうして俺の名前を知ってたんだ? 「あ、私は古川ゆいです。 よろしくお願い致します」 「古川……ゆいちゃん?」 「はい……」 「そっか、よろしくね」 「はい」 「じゃあ、本題に入っていいかな。 少し話を聞きたいんだけど……」 ひと通りの自己紹介&挨拶を互いに終えたところで、佳織は切り出した。 「さっきの場所――なんだけど、 あの、あそこで……何があったの?」 慎重な態度で佳織が問う。 対する問われた少女こと古川ゆいは、特に動じることもなくあっさり答えた。 「これといって何も……」 「えっ?」 「いやいや、何もなかったってことはないだろ」 身構えていた反動であぜんとした佳織に代わり、俺は少女に言葉を返した。 「お前はあそこで倒れていたんだぞ? しかも――」 素敵な映像が脳裏に浮かびかける……が! 目の端でカバンがゆらりと持ち上がった気がして、俺はその映像を制御しておく。 うん、それを思い出すのは孤独な夜にしておこう。 さて、となると―― 俺は別の要素を列挙する。 「じゃあ、あの派手な揺れと、大きな音なんだが……」 「あ、うん、それは私も感じた」 佳織が会話に復帰。親身な表情で古川を見つめた。 「もし、訳があるのなら話して。 私たちなら力になれるかもしれないし」 「すみません、お心遣いは嬉しいのですが……」 「私にとって不都合な出来事はありませんでした。 ですから、ご心配には及びません」 「そう言われても……なぁ、佳織」 「う~ん、初対面の私たちには、 やっぱり話しにくいのかな……」 「初対面……」 耳に引っかかった単語を何となく呟いた俺は、ふとひらめく。 「そもそも、古川はこの学園の学生なのか?」 「はい……先日、転入してきたばかりですが、 1-Aの学生です」 「1回生? じゃあ、私たちの後輩なんだね」 だったら、古川が俺のことを知っていたとしても、不思議ではない……のだろうか。 例えば、今日の柔道部との騒動を見ていたとか。 それなら……「あの人は誰ですか」と尋ねれば、可愛い転入生に答えるやつもいただろう。 「でも、後輩なら尚更……かな。 先輩として、ゆいちゃんのことが心配なんだけど」 「すみません、重ね重ねになってしまいますが、 ご心配には及びません」 「じゃあ、倒れていた理由は? そして……服を着ていなかったのはどうして?」 「それは、お答えできません……」 言いたくないのか、それとも言えないのか。 表情が読めないので分からないが、なんにせよ聞き出すことは難しそうだ。 「分かった。 それじゃ一つだけ確認させてくれ」 「なんでしょう?」 「不都合な出来事はなかったって、 さっき言ったよな?」 「はい」 「それはつまり、えっと……こう、あれだ――」 佳織のように上手ではないが。 俺なりに古川を気遣い、慎重に言葉を選んで問いかける。 「誰かにひどいことをされた……とか、 何か辛い目に遭ったとか……」 「そういうのは……なかった、のか?」 佳織と俺が最も心配していること。 裸の一回生が何者かに何かされてしまった、という懸念。 だが、ゆいは淡々と自分の胸を押さえて告げる。 「そのようなことはありません。 私は一人で……あの場所にいたのです」 「一人って……」 その詳細のところに問題がある気もする……が、どうやら俺たちの心配は、取り越し苦労だったようだ。 「嘘じゃないみたい、だね」 「ああ、そうだな」 顔を見合わせて確認しあった佳織と俺は、ホッと安心して表情を和ませた。 「ご心配をお掛けして、申し訳ありません」 「ううん、こちらこそ。 変なことに気を回しちゃって、ごめんなさい」 「変なことですか?」 「ほら……格好が格好、全裸だったろ?」 安心で気が緩んだからだろう。 思い出してしまった俺の声が、ついつい楽しそうに弾む。 「…………」 気づいたときには遅かった。 物騒に微笑みながら、佳織がカバンを大きく振りかぶっていた! 「大変申し訳ありません、佳織様」 「よろしい」 この謝罪は、何となくクセになってきた気がする。 「いえ、大丈夫です。 私は気にしていませんから」 「えっ? でも……裸を見られたんだよ?」 「はい、問題ありません」 「えっと――」 まったく動じていないニュートラルな古川を前に、同性として佳織が大いに驚く。 まぁ、同性ではないが……それには俺も同感だった。 「いや、そう言ってもらえると俺も気が楽だが……」 「あれは……言わば事故ですから」 「いや、しかし……」 「犬に噛まれたようなもの、という言葉もあります」 そういう時に使う言葉なのかは、はなはだ疑問だが―― 「う~ん、ゆいちゃんがいいのなら、 それでいい……のかな?」 「はい」 「……だそうだ」 「う~ん……」 今一つ納得しきれない感じの俺と佳織だが、このまま考え込んでいても埒があかない。 「とりあえず、時間も時間だ。 ひとまずまとめておくか」 「……うん、そうだね」 「今日5階で何かがあったが、古川は無事。 全裸だったのは別として、特に問題はなし!」 「はい」 「誰かに迷惑だってかけてないんだよな?」 「いえ……」 「えっ?」 まさか、他に関連する人物が…… 「秋山さんと佳織さんには、介抱して頂いたり、 制服を貸して頂いたりと、ご面倒をおかけしました」 「なんだ、俺たちか……」 俺は胸を撫で下ろす。 「私たちのことは、気にしなくていいよ」 穏やかに微笑みながら佳織がフォロー。 「私たち以外には、何もないんだよね?」 「はい」 「だったらいいよね、奏くん?」 「ああ」 全裸のことやら揺れやら音やら、謎だらけではある。 けれど、みんな無事なら、ひとまず今はそれでいい。 唯一の大問題である、俺が裸を見てしまった事も気にしてないようだし。 「それじゃ、そろそろ帰ろうか。 ずいぶんと遅くなっちゃったけど」 「はい」 「よかったら、家まで送っていくけど?」 「そうだね。 うん、それがいいかも」 「いえ、私は一人で大丈夫です。 私は近くに家を借りてもらってますから」 「そうなんだ」 「はい、問題ありません」 とりつく島もなく、古川はぺこりと頭を下げた。 「では、私はこれで失礼します……」 辞した後、くるりと回れ右をして、古川は保健室から去っていった。 「なんだか……不思議な雰囲気の子だね」 「そうだな」 「でも、悪い子じゃないね」 「そうだな」 「肌も綺麗で、可愛かったもんね」 「そうだな!!」 「……ふふふっ」 「すみません、ごめんなさい、申し訳ありません。 カバンをお収め下さい!」 「もう、早く忘れてあげなきゃ駄目だからね」 「分かってる……」 確かにラッキーな事故だった。 しかし、それが古川的にOKだったとしても、いずれは忘れてやらないといけないものだ。 「まぁ、口調とかは変だったが、すごくいい子だった」 「うん、そうだね」 何故だか和やかな気持ちで、俺は古川を見送っていた。 多分、佳織も俺と同じのはずだ。 けれど―― ほんわかと和んでばかりもいられないことを俺は思い出してしまった。 「やばい!」 「え? 何が?」 「もうこんな時間だ! 早く帰らないと、詩織さんカンカンだぞ!」 「あ……」 恐怖と書かれた青い顔で、硬直する佳織であった。 そして、もう一つ。 古川が俺を知っていた理由だ。 同じ学園の学生だから、知っていたとしても不思議ではない。 俺のことを知る機会ならいくらでもあるだろう。 真っ先に思いつくのが昼間の柔道部とのゴタゴタ。 あの時の観客の中に、彼女がいたのかもしれない。 あるいはいなかったとしても、あれだけの騒ぎだ。間接的に知ることも充分に考えられる。 だが…… そんな野次馬レベルの認識ではないような、そんな気がするのだ。 もっと強いレベルで、もっと深いレベルで、古川は俺を認識していたような気がする。 ……というのは、自意識過剰か? 「どれもこれも、分からないことだらけだ」 ピースが不足し過ぎている空白だらけのパズルだ。どう考えても分からない。 「せめて、古川からもう少し詳しい話が聞ければ……」 だが、今日の彼女の態度を思い出すと、それはとても難しそうだ。 「古川については手詰まり……となると――」 「やっぱり柔道部の件を優先すべきだよな。 学園祭まで、後18日だし……」 とりあえずの指針は、そちらに移しておくとするか。 俺はぐぐっと身体を伸ばしながら、そんな風に考えていた。 怒りの爆発が背景に見えそうな形相で柔道部員が叫ぶ。 今にも先輩に襲いかかりそうな勢いだ。 俺は瞬時の判断を余儀なくされた。 答えは1つ。 せっかく先輩が『おとり』を演じてくれたのだ。俺は古川へと走った。 「うぉっ!」 先輩に気を取られていた柔道部員が慌てる。 しかし、もう遅い。俺は古川を退かせて、彼女を背にかばう位置に立つ。 「てめぇ!」 「くそ、ならこっちを!」 ターゲットを先輩へと再設定する柔道部員。 だが、これまた遅い。 「イェイッ!」 柔道部員が俺に気を取られていた隙に、ケニーは先輩を背にするポジションをゲットしていた。 「見事なコンビネーションですね」 マイペースな感想が背後から聞こえた。 この様子なら大丈夫そうだが、念のために俺は尋ねる。 「大丈夫か?」 「はい、問題ありません」 「なら、OKだな」 これで作戦の第1段階はクリアだ。 ……ということは、だ。 「ヘィ、奏! 後は騎兵隊の到着を待つだけだぜ!」 「そんな消極的作戦は却下よ」 「さぁ、わんわん1号さん&2号さん、 今すぐ悪党どもをやっておしまいなさいっ!」 「え、俺……わんわんですか?」 「嬉しいでしょう?」 「嬉しいのですか?」 「いや、あの……」 「おお……俺が1号か!」 「いや待て! じゃあ、俺が1号で!」 「……分かった、それなら俺が力の2号だ! さぁ悪党ども、かかってこい!」 「ただし……俺はメニィ強いぞ!」 どうやらケニーは、1号でも2号でもいいらしい。 どちらかと言うと、ケニーの方が力持ちだから、役割としては2号の方がピッタリだが…… 「ふふっ、上出来よ二人とも」 「チッ……」 柔道部員はひるんでいた。 なにせ昨日の今日である。連中はケニーの強さを身をもって知っているのだ。 「あの……秋山さんも強いのですか?」 「いや、俺は……まぁ、申し訳程度だな」 暴力とかは、正直苦手な部類なのだ。 古川はきょとんとしていたが、納得したのか視線を彼らに向けた。 俺も話し相手を柔道部員へと変更し、台詞を続ける。 「……というわけで俺は弱い。 昨日の今日だから、お前たちもよく知ってると思う」 「だから、かかってこない方が身のためだ」 「……あん!?」 「昨日は運よく気絶ですんだが、 多分だけど、今日の俺は非常に運が悪い」 「あら、本当。 奏さんの顔に死相が浮かんでるわ」 「シィット! よくも俺のソウルフレンドを殺したな! 許さんぞ悪党ども!」 「…………いや、まあ、うん」 「秋山さん、死んではいけません」 「いや、あのな……」 どうしてだろう。 最初は軽い脅し(?)のつもりだったのに、どんどん本当に命の危険を感じてきた。 「これで貴方たちも、めでたく殺人罪ということね」 「そうね……死刑か無期、もしくは五年以上の懲役。 大変そうね、まだ若いのに……」 「くっ……」 猛烈にやりづらそうな様子で、柔道部員は攻撃を躊躇|ためら)う。 上出来だ。この調子でうまく時間を稼ぎ続ければ―― 「スーパー愛理ジャァァンプ!」 おっ! 真打か!どうやら、もう時間稼ぎの必要はないようだ。 「スーパー愛理キィィック!!」 答えは1つ。 せっかく先輩が『おとり』を演じてくれたのだ。 「ゴゥッ!」 それに気付いたケニーが、真っ先に動いてくれた。 「うあっ!」 先輩に気を取られていた柔道部員が慌てる。 しかし、もう遅い。ケニーはササッと古川を背にかばう位置に立つ。 「てめぇ……」 「くそ、ならこっちだ!」 ターゲットを先輩へと再設定する柔道部員。 だが、これまた遅い。 「はい、残念」 柔道部員がケニーに気をとられていたスキに、俺は先輩を背にするポジションをゲットしていた。 「素敵なコンビネーションね」 「先輩があいつらを煽ってくれたおかげです」 「これで後は、お寝坊さんの到着を待つだけね」 「ええ、できるだけ早く来てくれることを願ってます」 「もし来なかったら?」 「来るまで壁を務めますよ」 ケニーはともかく俺は弱い。 柔道部である彼らに勝つのは難しい。 けれども、時間稼ぎくらいはできるはずだ。 「先輩には、指一本触れさせません」 「ふふっ、ありがとう、奏さん」 毒舌を浴びることが多いせいか、感謝の言葉がこそばゆい。 「よっし! 覚悟完了!」 俺は意気揚々と身構えた。 しかし、その意気込みは空振りに終わってしまった。 「ウルトラ愛理ジャァァンプ!」 ウルトラヒーローの到着であった。 「ウルトラ愛理キィィック!!」 答えは1つ。 先輩が『おとり』を演じてくれた隙に、古川の安全を確保。 これが第1ステップだ。そして、第2ステップ―― まもなく登校してくる愛理の到着まで、俺たちが時間を稼ぐ。 ケニーはともかく、俺はとにかく弱い。 この場を切り抜けるには、やはりあいつの存在が不可欠だ。 なんとしても、愛理が来るまで持ちこたえなければ―― 「ミラクル愛理ジャァァンプ!」 ……時間を稼ぐまでもなかったらしい。 「ミラクル愛理キィィック!!」 必殺の一撃!! 「あぐぁっ!!」 柔道部員の1人がド派手にブッ倒れた。 「ナイス飛び蹴り!」 「今日もキレがあるわね」 「当然よ、完璧に決まったわ……」 前髪を揺らし、愛理が不敵に笑う。 「思った以上に早かったな」 切り札の到着に、ホッとひと安心して声をかける俺。 だが途端に、なぜか愛理は不機嫌顔になった。 「アンパンが売り切れだったのよ」 「……はい?」 「今朝は牛乳でアンパンを食べたい気分だったの」 「オゥ、牛乳とアンパンの組み合わせは、 最高にデリィシャスだからな!」 「そうなのですか?」 「うん、美味しいのは確かだな……」 「なるほど、覚えておきます」 「上出来だ」 「でもね、売り切れだったのよ、アンパン……」 それはそれは悔しそうに、愛理が拳を握り締める。 「だから、今日の朝食は牛乳だけ。 悔しさを噛み締めての一気飲みだったわ」 「ああ、それで来るのが早かったのか……」 「それでも充分に、お寝坊さんというのが素敵ね」 「でも、牛乳を飲むということに意義があるのよ」 「ええ、弛まぬ努力は必要よね」 愛理が自分の胸に手を当てると、先輩もそれに頷いた。 ……なるほど、重要だな。 「……というわけで、今朝の私は機嫌が悪いのよ」 それほど悪く見えない辺り、半分以上ワザとなのだろう。 要するに、柔道部への降伏勧告も含んでいるのだ。 「さぁ、どうするの? このままだと痛い目を見るかもしれないけど」 「既に一人が痛い目を見てる気が……」 「そう……ですね」 「さぁ、どうする? 俺は撤退を勧めておくが……」 「な…………」 「私は無様にも果敢に挑んだ結果、 全員がボロ雑巾のようになるのを見てみたいわ」 その言葉がとどめになった。 「ぐぬっ……おっ、覚えてやがれ!」 捨て台詞一つを残し、倒れた仲間を助けあげて柔道部員は去っていく。 「あら、賢明な判断ね……」 「そうね、素早い解決になったわね。 私としては、多少暴れ足りないけど……」 「はい、どうどう」 「もうっ、人を馬みたいになだめないで」 「イェア、会長はじゃじゃ馬だからな!」 「ふふっ、蹴られたいのかしら?」 「いや、大変ソーリー申し上げます」 「よろしい」 「しかし、災難だったな古川」 「助けて頂いてありがとうございます、 秋山さん、皆さん」 「もしかして知り合いだったのか?」 「まぁな、昨日ちょっとあってな……」 口ごもったのが失敗だった。 面白いオモチャを見つけたような笑顔で、先輩が問いかけてくる。 「……口ごもったからには、 楽しい何かがあるのかしら?」 「いや、それは……」 さすがは先輩だった。こういう時だけは、他人の弱みを見逃さない。 「そ、そういえば古川! どうして柔道部にからまれていたんだ?」 やむなく俺が話を逸らすと、とんでもない冷気が先輩から流れてきた。 「少し尋ねごとをしたら、急に怒りだしたのです」 「ォワッツ? なんて尋ねたんだ?」 「はい、『私、天文学会に入りたいのですが、 どこに行けば宜しいでしょうか?』と」 「………………」 俺は思わず頭を押さえる。 「ノゥ……」 ケニーも同様らしい。 「どうして、あのおサルさんたちに尋ねたの?」 先輩は俺より興味が向いたのか、顔を楽しそうに輝やかせた。 「昨日、天文学会と柔道部が一緒だったという話を 聞きましたので……」 「ですから、柔道部の人に尋ねれば、 天文学会のことが分かると考えました」 「それはまた……すごい理論だな」 頭を抱える男性陣。 「……どんな風に一緒だったかは聞かなかったのね」 「言い争いをした結果、蹴られていた、と……」 「なるほどね、ふふっ」 それを知っていて柔道部に尋ねたのか。 それは天然ではあるが……柔道部にしてみれば、たまったモンじゃないだろう。 そりゃあ、負けた記憶も新しいのだから、思わず激怒しても仕方ない。 「とても面白い子だわ」 先輩は興味深そうな笑みを浮かべた。 「はい、合格! 今からあなたは、天文学会のメンバーに決定!」 「即決かよ!」 「はい、ありがとうございます」 「ありがとうって……」 「うん、それじゃ部室に案内するわ、ついてきて」 「あ、はい」 「いや、待て待て、まだ午前中だぞ」 「うん? ああ、そうだったわね。 じゃあ、また放課後ってことでいいかな?」 「はい、大丈夫です」 「それなら、授業が終わったら迎えをやるわ」 「迎え?」 「ちゃんとエスコートするのよ、奏」 「………………そんな気はしてた」 「あの、すみません、お手数をおかけします」 可愛らしい後輩がぺこりと頭を下げる。 こうなると先輩として悪い気はしない。 「分かった、じゃあ教室で待っててくれ。 確か1-Aだったよな?」 「はい、よろしくお願いします」 もう1度ぺこりと頭を下げて辞した後、くるりと回れ右をして古川は去っていった。 「なんだかミステリアスなレディだな」 去り行く古川の背中を目で追いながら、独り言のようにケニーが感想を述べた。 「そうだな……」 古川の背中をぼんやりと眺めながら、独り言のように答えて俺はうなずく。 「それで? 二人の間には『ちょっと』何があったのかしら?」 にこやかな笑顔の先輩に再び問われ、俺は一気に血の気が引いた。 そう、逃れられるはずがなかったのだ。 「えっ? いやその、ですからちょっと……」 「言葉を濁して誤魔化すほどに、 いかがわしい関係なのかしら?」 「違いますっ!」 しかし、脳裏に浮かぶのはあの姿で―― 「何っ! エロスな関係!?」 「だから、違うっての!」 「まさか……脱がしたりしてないわよね?」 くっ、どうしてこんなに勘が鋭いんだ! 「ま、まさかそんなこと……脱がしてはいないぞ!」 「脱がして『は』いない、と……」 「……っ!」 この人の視線、マジで怖い!! 「なんか怪しいわね……」 愛理が俺の泳ぐ目を覗き込んだ。 「いや、本当に俺は清廉潔白……というか、 佳織に聞けば何もしてないのが分かるはずだ!」 「佳織に? 佳織か、う~ん……」 「ええ、奏さんと二人きりだったなら、 よこしまなこともあったでしょうけど……」 「二人であってたってことなら話は別だな」 「まぁ、それならいいか」 「なんだよ、やけに安心してるな」 「ううん、佳織がいなかったなら危険だけど、 佳織が一緒なら……ね」 「そう思う理由は?」 「え? ああ、なんとなくよ」 「なんとなく?」 「別に何でもないわよ」 「変なやつだな」 「奏にだけは言われたくないわ」 「まったくだ!」 「あのね、ケニーも十分変よ」 「オゥフ!!」 「変態度で言えば、ある意味奏さんよりも上よ」 「オォォオオウ!?」 「そこまで追い打ちますか……」 「何か言ったかしら?」 「いえ、何も……」 「ならいいわ」 たおやかな笑顔の先輩を前にした俺は、ヘビを前にしたカエルの心境だった。 「ふふっ」 「………………」 『上手く逃れたわね』 その視線は、そう告げていた。 訂正――ただのヘビというレベルではない。この笑顔の威力はメデューサだ。 古川……お前が足を踏み入れたのは、モンスターハウスだ。 古川の去っていった方角に向かって、俺は心の中で合掌していた。

Key

Keyブランド設立10周年プロジェクト

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Key's Question-Answer Journal
ちなみに大学を卒業後、すぐにKeyの仕事に携わることになりました (1)

Key Sounds Label

Manga

Hachimitsu

Madowanai Hoshi

Ch. 48

いつの間にやら 同行 お互い様 吸う 特徴 そろり 抑える 都合 立ち去る 実感 用事 拾う 文 まとわりつく 打ち捨てる ぶんぶん 諸々 あらかた 混ざる 汚染 清浄 災害 接近 画面 誘導 直ちに 避難 あまた 星 集合 正体 希望 かきわけ 飲み込む 日食 英領印 悪口 植民地 示唆 根拠 師 大権威 探究 遠回り 地道 回りくどく 画像 そっくり 超新星爆発 のち 四散 凝縮 おしゃれ たるや ポッと 周囲 境界面 特異点 基準 球状 降着円盤 渦 中心核 領域 光源 まばゆい 粉みじん ちり 高速 ぶん回す 達する 勢い 件 如く 放つ 膨張 赤方偏移 によって 着色 可視光線 鑑みる 妥当 左記 けた違い 振り切る やっとこさ 訪れ 捻じ曲げ 球体 包み込む 放り出す 勢い 現象 術 対生成 対消滅 量子力学 光景 発生 消費 弱体化 数少ない 原因 蒸発 手前 段階 より 溶け込み 沈黙 怖ろしげ よばわり あらゆる 降り注ぐ 無縁 満たす まさしく 源 宇宙 邪魔 をば

Bokura wa Mahō Shōnen

Ch. 25

のびのび 本腰を入れる マヒって おかしく 見参 不手際 そんな折 機能 試し 三拍子 いたって 手厚い 業 ふがいない あてつけ まじめ 蔑ろ ころがる 快適 決定的 ばつが悪い 社会勉強 気にかける 気遣い 感服 支部 対処 仕方ない 施設 部長 志 仕える お見知りおき 素直 構える 抱える なり手 不足 質 国力補強 不本意 乗じる 引き抜き 次第 歓迎 一日一歩 お堅い話 規律 義務 ノルマ 口先 のそのそ 無期限 身をもって 着脱 自在 下心 気兼ね 引き入れる もみもみ 推す 成敗 快適

Lazy Guy & First Love

  • My First Love Was a Beautiful "Girl" (少年の初恋は美少女♂でした。), [5]
Ch. 11.5

服飾 リップ

  • A Lazy Guy Woke Up as a Girl One Morning (めんどくさがり男子が朝起きたら女の子になっていた話), [6], [7]
Ch. 17

新規 実装 本来 口説く

Josō Shinai & Bokunare

  • Josō Shinai no wa Ore Dake na no ka!? (女装しないのは俺だけなのか!?) - Dengeki Daioh g (July 29, 2020), Nunu Tanaka, [8]
Ch. 7

どやされる 貧弱 今に 意識 書道 優雅 麗しい 磨き 似合わない 気配 実態 証拠 礼儀 悶絶 根性 叩き直す 屋外撮影 備品 出入り ばか 拒絶 ちょろい しばいた 夫婦漫才 広める 自然発生 認可 でかい 側 自然に ためぐち ぎりぎり

  • Konna Boku demo Maid ni Naremasu ka? (こんな僕でもメイドになれますか?) - Mankai (September 29, 2020), Koshō, [9]
Ch. 14

頑張る 確信 影 原点 身勝手 どうしようもない ふさがらない 傷 乗り越える 逆境 負ける どうにかなりそう

Futawaka & Totonaka

  • Futago no Danjo ga Wakaranai (双子の男女がわからない) - Magazine Edge (October 2020 issue (one-shot), February 2021 issue), Hanajiro Abe, [10], [11]
Ch. 3

普段着 物入 送る 納戸 寝室 譲る 照れる 思い描く 食中毒 買出し がてら 胃腸薬 常備 部屋義 幸せ たくましい 妥当 仕草 ぐたぐた 一択 放棄 おしゃれ きめ細かい 黒髪 際立つ 絡まれる 庇う お礼 資格 数多 色彩検定 清楚 吟味 学習能力

  • Shishunki to Danshikō!? to Nakano-kun (思春期と男子校!?と中野くん) - Monthly Bushiroad (November 2020 issue), Higashi 385, [12], [13]
Ch. 5

内申 面倒見がいい 副委員長 校外学習 門限 折れる 手ぶら 見渡す 工場 見学 堅苦しい 親睦 ゆるい 近場 不用心 不安 欠ける デリカシー 火傷 溝 罪滅ぼし 接する 名称 うってつけ 委員

Josokoi

  • Josō Kara Hajimaru Koi no Shikata (女装からはじまる恋の仕方) - Zzzqn! (February 20, 2021), Kurotama, [14]
Ch. 4

気を抜かず 一層 励む ゆくゆく 惚気話 よくよく 心が強い 唐突 向き合う どんより暗い 辛気くさい 豪商 由緒正しい 経営 尾ける 家柄 重んじる 強気 とはいえ 理屈 辛い 困難 立ち向かう 頭が回らない

Ichigo

Futaribeya

Ch. 69

片す 高級 舌肥え あわせる 微妙 庶民 一般旅券発給申請書 戸籍謄本 身分証 細かい すっきり 真顔 見本 保険証 卒論 口頭試問 圧 緊張 顔面 増える

Hino-san no Baka

Ch. 75

狸寝入り 煽る 虚しい

Tadokoro-san

Ch. 75.5

如く 守る 体勢 襲う 贅沢 隅々 徹す

Watatabe

Ch. 7

磯臭い 灰泥 血肉 片付ける 許さない ご立派 ピント 名簿 期間 馬鹿

Minori

  • Minori & 100 Ladies (みのりと100人のお嬢様) - Manga Club (March 2017–February 2020 issues), Kamiya Fujisawa, [21]
Ch. 12

検定 縮む もろもろ まんきつ 昇天 寄宿舎 館 花謳 成分 過剰摂取 星雲 建て直し 登下校 特権 こってり しぼりあげる 外出 相部屋 今すぐ 震え 寝食 言い合える しおり おっちょこちょい 心優しい

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