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だまされるな!アオイホノオ11のひみつ

庵野・山賀・赤井を含むクリエイティブ集団を指揮していた重要人物、岡田斗司夫が、物語の舞台である1980年代の世相や裏話を語ります!

岡田斗司夫プロフィール

9/27 更新最終話「青春とは何だ!?」のひみつ

ダイコン号の操縦席

モユルが見ている「ダイコン3オープニングアニメ」のラストカット近く、船長服の女の子が微笑んだら、操縦席のデブがスイッチを入れる。この手前のロン毛デブが当時の岡田斗司夫だ。奥に座ってるデブは武田康廣。

「僕の所で仕事手伝って欲しいぐらいです」

これは手塚治虫がダイコンの楽屋で実際に言ったセリフ。
「ぜひ東京に来て、24時間テレビのアニメを手伝って欲しい」と言った。24時間テレビのアニメ、とは日テレの「愛は地球を救う」特番で流される『ブレーメン4 地獄の中の天使たち』のことである。
しかし、このセリフが手塚から出たのは1981年8月22日。そして「手伝って欲しい」という『ブレーメン4 地獄の中の天使たち』のオンエアは翌日8月23日。もちろん間に合うわけがない!!
この手塚の恐るべきオファーに、当日は全員が凍り付いた。「手塚伝説はウソじゃなかったんだ・・・」と思い知らされた一瞬だった。
ちなみに、『ブレーメン4 地獄の中の天使たち』は大幅に未完成のままオンエアされ、翌年の24時間テレビのアニメは別会社に移された。

「なにか・・・ (手塚) ・・・足りませんよね?」

岡田斗司夫演ずる手塚治虫は、「なにか」と「足りませんよね?」の間に声ナシで「手塚」というセリフを入れている。もちろんシナリオにはないアドリブだけど、福田監督はこんなバカな演技にもOKだして、本編で採用してくれた。
この一事をもって、岡田斗司夫は福田監督を「生涯の監督」と呼び、以後は福田作品には「ノーギャラ・ノー出演NG」で望むことを誓ったのである!

「本当にそんなことなのか!?」

もちろん、本物の島本和彦はこんな勘違いはしない。あの1981年の夏、当時の少年ジャンプ編集者が指摘した「お前のマンガは、熱血に照れてギャグでごまかそうとしている。少年読者を舐めちゃダメだ。作者は恥ずかしくても全力で描け!」というメッセージを送ったのに、当時の島本はどうしても自分の作風にこだわって「ベタな熱血」が描けなかったのだ。
ところがなんの運命のいたずらか、島本はけっきょく、初の連載『風の戦士ダン』でベタな熱血を描くように強要される。しかしパロディやギャグしか描いてなかった島本は、原作者・雁屋哲を激怒させるようなパロディやオリジナルを入れてしまった。両者は2009年のパーティーの席上で和解するまで、延々と「気まずい関係」だったという。
かようなまでに、焔モユルにベタな熱血は無理だったのだ。

部屋を荒らしまくるモユル

第5話でサンデーまんがカレッジに落ちたモユルは、やけくそになりながらも部屋を荒らせなかった。積み上げた別冊サンデーを崩しただけ。つまり第5話のモユルは「失望したけど、絶望していなかった」わけである。
しかし今回のモユルは絶望している。マンガだけでなく、部屋のあらゆるものをひっくり返す。つまり「これまでマンガやアニメが好きだった自分」までも否定しているのだ。
その絶望は短絡的だけど、昏く果てしなく、やるせない。
おじさん、このシーンでちょっと泣いちゃったよ。

「彼氏やがな、見たらわかるやろ?」

とミノコ先輩は言うけど、実は視聴者にはよくわからない。
このシーン、台本では
「横から男があらわれて・・・マスミの肩を抱いた。照れくさそうにその手をはねのけるマスミ」
とある。つまり、ややイチャイチャしてるシーンのはず。
しかし実際の演技ではマスミ、なんとなくちょっとイヤそう・・・
これは演技の解釈違い? ひょっとしてAKB48ゆえの事情?

「違うぞ若者!」

という原作者・島本和彦の怪演技。
というか、これ演技ではない。実際の島本も、いつも話し言葉がセリフ口調だからだ。
「なるほど~と言うワケか!」とか、日常生活で使う人はこの人ぐらいである。

「あえて寝る!」

このシーン、夢オチのように見えなくもない。つまり功成り名遂げてマンガ家となった作者が、辛かった青春時代を思い出してる、という読み方もできる。
しかし、よーくシーンを吟味してみよう。
マンガ家になった焔モユルは、〆切りの限界をとうに過ぎている。しかし体力もすでに限界を超えていて、眠くてしかたない。
ではどうする?
モユルは「あえて寝る!」と叫ぶ。土壇場でまず逃避する彼のクセは、大学時代からなにひとつ変わっていない。唯一、変化したのは「それでもプロか?」と聞かれたときに「オレはプロだ!」と言い返せるようになった、ということ。
ずっとずっと自己正当化→自己欺瞞→自己嫌悪を繰り返してきたモユルは、作家になってついに自己を肯定でき、なおかつ「作品」という結果を出せるようになった。
しかし「あえて寝る!」というモユルの本質はなにひとつ変わっていない。
庵野も、モユルも、自分の生き方を変えなかった。ベタに徹すれば売れる、というジャンプの誘いを断り、自分の信じる「シリアスな絵でバカをやる」にこだわり抜いたモユルは、なにひとつ妥協せずに自分の夢を貫いた。
だから、このラストは大ハッピーエンドなのである。

※あくまで岡田斗司夫さんの個人的な感想であり、事実とは異なる可能性もあります。

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